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運送業自動車整備工場会社の業務改善・収益改善レポート

専門家(外から)アプローチの限界

中小企業の事業再生・事業承継支援をしていくときには、専門家等がDDから企業側と共に計画策定をし、モニタリング及び現場支援をしていく。実行支援時に計画書のアクションプランと現場支援していくときに修正しながら、支援を進めていき、目的達成していく。
基本的に専門家等が外側からアプローチ(モニタリングや支援)を続けていく方法は、企業の自助努力により改善するスタイルであり、支援を受ける体制を企業側の中に既に有していることが大前提である。
しかし、再生企業に、それが無い場合はどうすべきなのか。専門家がいろいろな手法や事例に基づいて、企業側にアドバイスをしても・経営者の能力不足で対応することができない・経営陣の中に暴走するメンバーがいる(常識が通じない)・そもそも改善内容を受ける組織が崩壊して存在しない場合、外からのアプローチは効果を発揮することができない。外部からのアプローチには必ず企業内に受け手が必要であり、畑がなければ、作物が育たないことと一緒である。この畑が無い場合、外からのアプローチが不可能になので、ターンアラウンドマネージャー(TAM)が現場に入り、組織や経営を開墾し耕していく必要がある。事業再生する場合の手法は実はシンプルな場合が多いである。一般的に当たり前のことを現場に根付かせていけば、再生していくレールに乗っていく。

シンプルな経営改善のケーススタディ
~運送業自動車整備工場会社事例~

組織が崩壊している再生企業事例を紹介する。

  1. 概要

    地方都市の運送業自動車整備工場を持つ企業で年商10億円であり、借入金は年商と同じであり、債務超過企業である。創業者はトラック1台から最盛期には関連会社を含めると約500台を有した企業で、地域の名士であった。現在は3代目であり、先代が亡くなられた後メイン荷主の撤退もあり、トラックはどんどん減少して現在は5台しか有していない。自動車整備工場は大型車と小型車の整備ができるが、大型車は自車トラックのみを整備しており、自車台数がの減少と比例して売上減少していき、途中他社のトラック整備を受注する方向で行っていたが、営業力がないため、うまくいっていない。小型車の整備工場は、大型車受注減少対策であったが、整備工場新設に過剰な資金がかかるなどもあり、運営はうまくいっていない。経営者は創業者の息子が継いでおり、自動車整備工場の業務で総務的な仕事を主にしていた。経営者は運送事業を現場に任せっきりであり、自動車整備工場の業務をみているが、経理関係のことばかりである。また組織作りを全くせず、全部他人任せにしていため、一部の幹部社員に現場を乱され、組織は崩壊していった。月1回の会議はあるが、各部門の長が数値を報告するだけの会議で、運送部門車整備工場部門の組織内に不平不満が溜まっていた。このような状況であったため、10年間赤字を続け、資産処分で穴埋めを続けしていたが、経営改善のめどが立たず、直近の経常赤字は5千万円となっていた。

  2. 現場改善支援

    時間軸の考え方は非常に重要である。短期間で実績を出すことに注力しがちであるが、半永続的にいる勤務するわけにはいかない。正常先になったら、お返しすることが前提であり、現場メンバーだけで運営していくための土台作りに時間をかける必要がある。

◎実施した内容
①従業員との信頼関係を作る
 ・1対1の面談の実施、全従業員に財務等も含めて企業内情報の開示、業務上の意見を基本全て受入る
②組織を作る。
 ・公平性の担保、適材適所、参加者の理解の上での決定
③長所を伸ばす
 ・自社の特徴を生かす

①は文字通りである。「組織を作る」では経営陣にも同様な対応をし、能力に合わない役員報酬や待遇はどんどん捨てて、適正化をし、現場業務を積極的に行うように促した(但し十分役員との信頼関係を構築してから)。
「長所を伸ばす」ことについては、撤退モードであった運送部門の強化を図った。歴史的にみても特徴があり、取引先も魅力的であったため、復活できると判断し、運送計画の見直し、ドライバー教育等を行いながら、増車し営業強化を図った。
このような当り前でシンプルな実施内容で、売上は微減となったが、2年後営業黒字達成、3年後1千万円の経常黒字となった。

まとめ

事例の社長は多少経営の能力不足があったかもしれないが、非常に真面目で行動力のある社長であった。ではなぜ常識では当たり前と思う内容ができなかったのか。それはできないものはできないのである。一般的な常識のモノサシで、全てを計ることは返って再生現場を混乱させて窮地追い込む可能性もある。企業状況を正確にとらえて、再生企業の土俵に立ち、正しく処方することで、再生のレールにうまく乗せることができるものと考える。

 

ターンアラウンドマネージャー SM