1. HOME
  2. 登録人材活動事例
  3. 建設部材卸売業の業務改善・収益改善レポート

登録人材活動事例

Activity

建設部材卸売業の業務改善・収益改善レポート

出向先企業の状況及び再生計画

売上高が10年前に比べ前々年には65%までに大幅に減少し、現在も低迷している。加えて、大手ゼネコンの破綻および支援先の破綻等が多発し、10年間で13億円の貸倒損失が発生している。さらに、協力企業への支援のための資金を金融機関から調達したため借入金が大幅に増加し、借入過多による債務超過に陥って苦境にある。
私のTAMとしての任務は、CRCが策定支援した「経営改善計画書」に沿った基本再生計画をもとに、改善期間は10年間、年間の売上高は4%アップ程度で、営業利益1億超を確保して、初年度より経常利益黒字化を達成し、毎年6千万円の返済を実施、8年以内に債務超過を解消するために、出向先企業の改善を確実に進めていくこと。
改善の第一歩として、グループ会社の統合により組織を一体化して、情報の共有化、営業活動の効率化により、売上高の増加を図ると同時に、人員削減を含む合理化によりコスト削減を進めていく。
統合後の部門は、A事業部、B事業部(製造部門を含む)、C事業部、本部(総務、経理)
とし、各部門の役割を明確にし、部門として独自性を発揮すると同時に、総合管理体制の強化により採算管理、与信管理などを確実に実施することにより、収益力の強化を図る。具体的には、各部門において、収益関連の個別課題をアクションプランとして改善活動を進める。

個別部門の改善

  1. A事業部

    中小工務店、個人事業者などを主要販売先として建設部材を提供している。
    改善策として、自社の重点商品の中で有力取引先が他社から仕入れている商品をターゲットにして拡販し、計画的な仕入れ、一括納品により仕入れコストおよび配送コストの削減で収益向上を図る。
    若手が多く、従来から社長が事業部のまとめをしていたことで社長との距離が近いこともあって、改善に前向きである。個人の改善意欲を大事にすると同時に、組織としての整合性を保つために、子会社に出向していたベテラン課長を事業部のまとめ役として起用した。部門としての一体性を保ちながら、メンバーの長所を活かしていくことで十分な成果を上げることができた。課長は2年後には事業部長に昇格して役員会のメンバーとして活躍している。

  2. B事業部

    大手ゼネコン、中堅ゼネコンなどを主要販売先として建設部材を提供している。
    全社売上高の6割以上を占めている主力事業部である。製造部からの仕入は3割以下にとどまり、他部品は他社から調達している。改善策として、顧客別の売れ筋商品を調査し、取扱商品を増やして売上高の増加を図っていく。従来は、営業効率の面から大手重視の営業活動を進めてきたが、A事業部と連携して、地元の中小事業者をターゲットにした拡販活動を進めている。

  3. 製造部門(子会社を吸収合併)

    需要期(11月から翌3月)、閑散期(4月から10月)がはっきり分かれており、閑散期に在庫の積み増しが必須となっている。従来は、B事業部の指示で製造し、売れ残りは製造部の在庫として処理されていたため、製造部にとって大きな負担となっていた。改善策として、B事業部にできるだけ正確でタイムリーな情報提供を要求するとともに、過去5年間の製品別出荷数の推移を分析して、製造能力の8割を在庫確保のための計画生産にあて、残りの製造能力で日常の出荷に対応することにした。また、作業分析による効率化および計画生産により効率アップを目指すと同時に、ヤードの整理、レイアウトの見直しにより製品別在庫数量を明確にして、作りすぎのムダを無くすことに努めた。
    改善効果が顕著で大幅な収益改善を達成し、2年後には正式に製造事業部として独立した。

  4. C事業部(子会社を吸収合併)

    大手メーカーから資材を購入し、建築部材として加工・据付け工事を施工している。
    事業部売上高の半分以上を事業部長一人で稼いでいるが、採算の合わない案件が多数存在している。二人で客先を訪問して、案件ごとの収支実績を説明し、これからは採算の合わない案件は受注できないと申し入れした。以後、価格交渉に応じていただいて、採算性も向上し取引を継続させていただいている。
    部長一人では事業部の経営は無理だと判断したが、社員の中に適当な人材がいなかったため、外注の中からベテランの一人を部長補佐としてお願いし、二人で業務を遂行してもらうことにした。業務上の補完関係がプラスに働いて、採算性が向上し大幅な利益増加を達成した。1年後に外注から正社員に登用して、次長として処遇している。

改善結果

3年間の実績は、平均年間売上高は目標達成し、平均営業利益も大幅に改善、2年目より年間返済額を1億円に増額、TAM任務完了時には債務超過はほぼ解消した。
3年目初めより各部門の事業部長を取締役に選任し、社長、常務と合わせて6人で毎月取締役会を開催して、各部門の現況の把握、全社的な課題を検討することで、一元的な経営を目指している。

 

ターンアラウンドマネージャー NT